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NHKの連続テレビ小説「おちょやん」は…


 NHKの連続テレビ小説「おちょやん」は、上方女優・浪花千栄子がモデルだが、今の若い世代で浪花を知る人はまずいないだろう。しかし、昭和30年代生まれの気流子などには、名前の通り、大阪・関西を代表する女優であった。

 まず浮かぶのはオロナイン軟膏のテレビCMとホーロー看板。浪花がこのCMに出た切っ掛けは、本名が南口(なんこう)キクノだったからというのも面白い。

 小さい時から苦労し波乱の人生を送ってきたこともあり、喜劇もシリアスなものも見事に演じる役者だった。気流子の推しは、小津安二郎監督「彼岸花」で京都の旅館の女将を演じたもの。

 山本富士子演じる娘の結婚相手選びを兼ねて入っていた東京の病院の人間ドックから出てきて、旅館の常連客の会社重役(佐分利信)の家を訪ねる。妻(田中絹代)が茶の間に案内し、一旦奥へ。浪花が「これつまらんもんどすけど」と家政婦に手土産を渡す。「ありがとうございます。いただきます」と家政婦。

 浪花「あんたんやおへんで、おうちへどっせ」。家政婦「分かっております」。長岡輝子が演じる家政婦とのやりとりが実に面白く、見るたびに笑ってしまう。再び現れた田中が「あんたの話きっとまた長くなると思って、ちょいとお手洗いに行っといたの」。アハハと笑った浪花の長い話が始まり、それがまた面白い。

 しかし浪花のような、よき上方の味を感じさせる女優がいなくなってしまった。どうしてだろう。