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東京の恵比寿ガーデンプレイス内にある東京都…


 東京の恵比寿ガーデンプレイス内にある東京都写真美術館で「瀬戸正人 記憶の地図」展が開かれている。内覧会も以前のように担当学芸員や作者が解説し、案内してくれる形式ではない。

 記者たちに見てもらい、その後ホールで解説するという形だ。質問は事前に主催者に伝えるだけで、質疑応答はなし。美術作品の場合、質問が千差万別で、それが面白かったのだが。

 瀬戸さんの生い立ちがユニークだ。1953年タイ北部のウドーンタニで、日本人の父とベトナム人の母の間に生まれた。父は旧残留日本兵で、母の両親はベトナムから戦火を逃れてこの地に。

 この街で瀬戸家は写真館を営んでいたが、大火で街が焼け落ちたのを契機に、父は瀬戸さんを連れて帰国し、故郷福島県国見町に移り住む。母と2人の弟と妹も来て一家が一緒になるのは3年後の64年。

 父は再び写真館を始めた。瀬戸さんは東京写真専門学校で学び、80年代写真家として活動を開始。撮影地はタイ・バンコクと、母方の親族がいるベトナム・ハノイ。その後、東京に住むアジアの人々に目を向けた。

 そこには生々しい時間と感触がある。「写真とは何かというと、花が写っているとします。花を見せたいのではなくて、撮った人の眼差(まなざ)しや気持ちを感じてほしいのです。花は共有するものとしてあるだけで、撮った人の思いを見る。それが写真です」と瀬戸さん。本質は見えないところにあるようだ。24日まで。