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子供は、全てのものに意図や理由があると…


 子供は、全てのものに意図や理由があると考える傾向が強いという(三浦雅士著『出生の秘密』2005年)。子供が大人に向かって「××はなんで××なの?」と答えにくい質問をするのはそのためだ。

 これは三浦氏の独創ではなく、スイスの心理学者ピアジェ(1980年没)の説を紹介したものだ。山が高いのは地殻の変動の結果だが、そのメカニズムは解明されても、山が高いことの意味や意図は分からない。

 だから「偶然」の結果と大人は考えるが、子供は偶然を嫌う(必然に安心する)とピアジェは指摘する。ピアジェは子供と未開人の思考は似ているともいう。

 そう言えば『古事記』の神話を見ると、日本という国の成り立ちについて「こういう理由(意味)でこうなって、日本という国は生まれた」と記述している箇所が幾つも見つかる。

 逆に大人であっても、天才はしばしば子供じみている。例えば、中島敦(1942年没)。「自分を取り囲んでいるあらゆるものは、何と、必然性に欠けていることだろう。世界は、まあ何という偶然的な仮象の集まりなのだろう!」という言葉が「狼疾記(ろうしつき)」という作品中に書き留められていることを三浦氏は指摘している。

 中島は偶然と必然の関係について、観念論としてではなく、本気で悩んでいた。子供を「単なる無知」と決め付けるわけにはいかない。「大人になればなくなってしまう何かを秘めている」とは言えそうだ。