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フランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユ(1909…


 フランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユ(1909~43)は劇的な生涯を送った女性だった。工場労働を体験し、スペイン戦争に赴き、ユダヤ人であるが故に亡命を余儀なくされ、ロンドンで亡くなった。

 全16巻の全集が刊行されているが、生前に出された著作は一冊もなく、47年にギュスターヴ・ティボンによって編纂(へんさん)されたノート抜粋『重力と恩寵』がベストセラーになって注目された。

 日本語訳も旧訳、新訳登場し、研究書も多い。主題は多岐にわたるが、その思想の特徴は、西洋史に一貫して流れる「力」の文明を問題にしたことだ。「力」の特性とは人間を「もの」にすることだという。

 『根をもつこと』の中で、それを古代ローマに探り、ナチス・ドイツにも探る。ローマ人によって初期キリスト教徒たちが迫害されたことはよく知られているが、彼らは豊かな霊的実体を有する文化に不寛容だった。

 ローマ人はガリアのドルイド神官を皆殺しにし、エジプトの宗教祭儀を廃絶し、ディオニュソス崇拝を血の海に沈めた。人間を「もの」にする「力」の文明が最後に結実したのは、共産主義である。

 現在、中国共産党政権によって、ウイグル、モンゴル、チベットなどの諸民族が言語や伝統文化を否定され、危機感を抱いた多くの人々が抵抗して弾圧されている。このニュースは世界中に広がって、日本でも抗議デモが行われた。人は「もの」ではなく霊的存在なのだ。