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第163回の芥川賞・直木賞の受賞者がこのほど…


 第163回の芥川賞・直木賞の受賞者がこのほど発表され、芥川賞に高山羽根子さんと遠野遥さん、直木賞に馳星周さんが選ばれた。3人が受賞するのは比較的珍しいケース。

 今回の芥川賞はさまざまな意味で話題性があった。一つは、候補に太宰治の孫で作家の津島佑子さんの娘、劇作家の石原燃さんの小説が選ばれたことだった。割合と知られているように、太宰は当時の選考委員だった佐藤春夫に懇願した手紙を書いていたほど芥川賞に固執していたが、受賞には至らなかった。

 津島さんも候補に3度挙がったが、やはり受賞は難しかった。石原さんの候補入りは、この3代にわたる執念がどういう結果をもたらすのか、興味深いものがあった。

 結果は3度目の正直とはならなかったが、講評をした選考委員の作家、吉田修一さんは、最終選考に残ったことを挙げ、今後に期待したいということを述べた。その意味では、太宰の悲願だった芥川賞を孫が今後取る可能性があるだろう。

 もう一つのトピックとしては、新型コロナウイルス禍の下では初めての選考会だったこと。各委員の論争はどうだったのだろうか。白熱したものがあったことは想像に難くない。リモートでの参加があったことも明らかにされている。

 文化関係の各種行事や選考会が中止や延期となることも少なくない中、しっかりとコロナ禍対策をした上で実施されたことは、一つの見識として評価できる。