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薫風の候5月から向暑の候6月に変わった。…


 薫風の候5月から向暑の候6月に変わった。昨年の今頃は暑い日が続き、熱中症への警告が盛んに出て閉口したが、梅雨のじめじめ感は意外になかった。今年は新型コロナウイルス対策もしっかりし、盛夏に向け活力を高めることが必要だ。

 武蔵野の面影が残る東京・調布市の農家で、青紫色のフウリンソウの花をもらった。家で水揚げし花瓶に挿していたのを翌朝見ると、釣鐘型の花がふっくらし、花弁に透明感が増したように感じられた。

 半日ほどの間に、花の瑞々(みずみず)しさがどれほど増したのか。とても計量できないほどわずかなものだろう。しかしその微妙な変化をキャッチし、さらに美しいと感じられるのである。

 人間の五官の繊細な働きについて、物理学者の佐藤文隆氏は「些細な条件に左右されるフラジャイル(引用者注・壊れやすい)な人間という存在に着目することで、細々とした『どうでもよい』諸条件の刻印を見ることができる」(『破られた対称性 素粒子と宇宙の法則』PHP刊)と記している。

 佐藤氏はミクロの素粒子の世界を研究し、宇宙の姿を解明してきた。宇宙が始まってから38万年後に光子が初めて長距離を進めるようになった現象を「宇宙の晴れ上がり」と命名した。

 「神は細部に宿る」という。人間は素粒子の世界から、無限の宇宙の姿やその成り立ちの手掛かりを読み取ったり、無限小と宇宙をつなぐ存在を推測したりすることもできるようである。