世界日報 Web版

駅に向かう道の途中に小さな花屋さんがある…


 駅に向かう道の途中に小さな花屋さんがある。店主らしき人が時々、道路側に小さなイスを出して座っている。何事か考え込んでいるように見えるのは花を扱っているせいか。

 いつも通り過ぎる店なので、季節ごとにガラス越しに見える花の姿が心を慰めてくれる。店の中にはツバメの巣があり、親鳥が虫を狙って飛び交う。その速さを見ると、宮本武蔵のライバルだった佐々木小次郎の秘剣「ツバメ返し」を連想する。

 その武蔵を描いた吉川英治の小説はあまりにも有名。2人の決闘シーンはよく知られているが、気流子が印象に残っているのは、武蔵が柳生の里を訪れ、畏敬(いけい)する柳生石舟斎とは会わず、ただ生け花の枝の切り口を見て互いにその名人たるを知るというエピソードである。

 吉川の創作らしいが、いかにも極意に達した剣豪同士の姿をほうふつとさせた。きょうは「母の日」だが、花屋で新型コロナウイルスの感染リスクの高まる「3密」を避けるため、業界団体は今月を「母の月」として分散して花を贈るよう呼び掛けている。

 母の日にはカーネーションとなったのは、米国の女性が母の追憶のためにこの花を贈ったことから。さまざまな色があるカーネーション。赤い花と白い花の違いはよく知られているが、「花言葉」から花の色によっては贈るにふさわしくないものもあるという。ちなみに、武蔵が石舟斎の名人たることを悟った花は、シャクヤクである。