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脱北2世少年の死


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 脱北2世の少年の霊魂は死んでも自由になれなかった。先月31日、ソウル冠岳区奉天洞の賃貸アパートで脱北者の母と一緒に死体で発見された6歳の少年は20日が過ぎようとしているのに葬儀すらできない状態だ。国内に誰も縁故者がいないためだ。現行法では家族や親戚など縁故者だけが個人の葬儀を行うことができるとされている。

 無情な社会は少年の死を知り得なかった。母子の遺体は死後2カ月もたって水道の検針員によってようやく発見された。滞納された水道料金がその死を知らせる最後の警報音だったというわけだ。母子が住んでいたアパートの家賃は月9万ウォンだった。母子にはあまりにも大金だ。家賃は数カ月も滞納され、水道の栓が閉じられて久しかった。家には米 1粒もなかった。

 少年の母親は2009年に自由を求めて脱北した40代の女性だった。中国の同胞(朝鮮族)と結婚して韓国で少年を生んだが、昨年、離婚した。母子は生活に困った。政府から支給されていた児童手当の10万ウォンまで今年6月に少年が満6歳を過ぎたので停止された。その後、母子には何の恩情の手も伸びてこなかった。世界12位の経済大国と161兆ウォンの福祉予算は絵に描いた餅にすぎなかった。遺体が安置された場所に掛けられた「命懸けでやってきてソウルで餓死した」というプラカードが母子の痛みを代弁するのみだ。

 4年前、トルコの海辺でシリア難民の少年アイラン・クルディ君の遺体が発見されると、韓国では追悼の波が起こった。3歳のアイラン君は家族と共にボートに乗ってスウェーデンに向かったが、波にのまれて溺死した。当時、ネチズン(ネット市民)はうつ伏せのアイラン君の背中に天使の羽を付けてあげた。地上では無視されたが、天国ではどうか悠々と飛び回ってほしいという願いからだった。8000㌔も離れた場所で起こったシリア難民の少年の死に対して、それほどまでに哀悼したわれわれが、目の前で繰り広げられる“韓国のアイラン”の死に対して無関心なのは本当に非良心的だ。

 韓国のアイランは自由に飛び回われる天使の羽もいまだにない。千辛万苦の末に大韓民国で生まれたが、自由と繁栄は少年のものとならなかった。少年の母親は死亡する半月前に通帳に残った全財産の3858ウォンを最後に引き出した。そのお金で子供に何を食べさせたのだろうか。心の痛い話だ。

(8月19日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。