世界日報 Web版

路上取り締まりで物議


地球だより

 ドゥテルテ大統領の鶴の一声で始まった「タンバイ」の取り締まりが物議を醸している。タンバイとは無職を意味する「スタンバイ」という言葉から生じたもので、転じて路上でたむろしたり暇つぶしをしている人々を指すようになった。

 警察はドゥテルテ大統領の指示の下、治安維持や麻薬戦争と関連付けてタンバイの取り締まりを行い、マニラ首都圏だけで5000人以上を拘束した。しかし中には、飲酒や上半身裸の外出など、禁止事項に違反していない人々も拘束されており、人権侵害との批判も高まっている。

 初めてフィリピンに来た頃は、昼間から路上で酒盛りをしたりバスケットボールに興じたりしている男たちを見て驚いたが、しばらくしてこの国では日常的な光景であることを理解した。というのも、特に貧困層は家屋事情が悪く、狭い部屋に雑魚寝で風通しも悪く、とても大人数がくつろげる空間ではない。そのため涼しい家の外に出て友人と話したり酒盛りをしたりと、路上が生活空間の一部となっている。必ずしもタンバイは犯罪予備軍ではないのだ。

 失業率の高いフィリピンでは、タンバイ(無職)にあまりネガティブなイメージはない。高校を卒業して大学に行かなければ、就業年齢に達するまでの数年間は自動的にタンバイになるという社会事情もあるからだ。路上のタンバイの一掃には、一時的な取り締まりではなく、貧困層まで行き届く経済の底上げが必要だろう。

(F)