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あるマジシャンの謝罪


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 『Sorry States 国際政治における謝罪』という著書がある米ダートマス大のジェニファー・リンド准教授は謝罪する行動は二つの核心要素を含まなければならないと強調する。「是認」と「反省」だ。文字通り自分の行為を認め、それを心から悔いなければならないということだ。リンド氏は、ある国家が過去の行為に対して公式・非公式に反省することを非常に強い謝罪、公式的に反省しながら非公式的に反省していなければ若干の謝罪、公式・非公式とも反省していなければ謝罪意思が非常に低い―と分類した。

 先月28日の韓国と日本の慰安婦関連協議が妥結した直後に岸田文雄外相は、日本の首相の謝罪意思を公式表明した。日本政府の責任を認めた点で、過去のどの謝罪表現よりも前進したとの評価もある。しかし「日本が失うのは(基金として出す)10億円だけ」との発言などが出ることをみると、真心のこもった反省とはいえない。外交的な合意による謝罪の限界だ。

 真心がこもっていなければ謝罪しないほうがましなことが多い。大韓航空の“ナッツリターン”事件の謝罪文は世論を鎮めるどころか火に油を注ぐ結果になった。運転手への暴行問題を起こした蒙古食品のキム・マンシク前名誉会長の国民に対する謝罪の場面は、一篇のコメディーを見ているように感じられた。彼が謝罪文を読みながら数回、読み終わってからもしきりに「大変申し訳ありません」と頭を下げたが、なぜかむなしかった。

 同月29日午後、ソウル松坡区オリンピック公園のある公演場で催される予定だったマジシャン、チェ・ヒョンウ氏の公演が突然、取り消された。照明が故障したためだった。公演時間を過ぎても入場できず外で待っていた観客の間で抗議と苛立ちの声が出始めた。この時、チェ氏が観客の前に現れた。彼は公演のキャンセルと払い戻しの対策を決定しようとして遅くなったといって謝罪した。

 彼は「百パーセント払い戻しと次回公演への招待」か「百十パーセント払い戻し」すると表明し、自分と一緒に写真を撮る機会をプレゼントしますと言った。彼が観客と写真を撮っている間に、スタッフも子供たちと同じ目線で「ずっと立ってて疲れたでしょ」と繰り返し謝罪した。

 すると魔法のようなことが起こった。抗議と苛立ちが感動に変わり、観客は笑顔で帰っていったのだ。チェ氏が観客の心を動かしたのはマジックではない。真心のこもった謝罪の心だった。

 (1月4日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。