世界日報 Web版

ブラジル大統領選挙で涙を誘ったシルバ候補


地球だより

 南米の大国ブラジルで来月5日に大統領選挙が実施されるが、女性候補2人がデッドヒートを繰り広げている。

 両候補とも異色の経歴だ。現職ルセフ大統領は、ブラジルの軍政時代に反政府活動を行い、軍部によって拷問を受けた。

 一方、ブラジル社会党(PSB)のシルバ元環境相は、黒人系貧困家庭の子としてアマゾンで生まれ、ゴム農園で働き、その後は環境保護活動に身を投じた。今回の大統領選挙では、その柔軟性でメディアを驚かせており、経済・財政政策では、中央銀行の独立性に対する保証や緊縮財政を打ち出している。

 現政権は、社会保障政策の「飢餓ゼロプログラム」等によって、貧困層に強い支持基盤を持つ。そのため、ルセフ陣営は、シルバ候補の市場重視姿勢を逆手にとり、「シルバ候補が当選すれば『飢餓ゼロプログラム』がなくなる」と危機感を煽(あお)っている。

 しかし、シルバ氏は、自身に与えられた2分間の政権放送の中で、「私を含む8人兄弟は、1日1度のみの粗末な食事が並ぶ中で育ちました。両親の食卓にはその食事さえもなく、私の母親はいつも、『私はもう食べたからいいのよ』と私たちに食べるように促しました。両親が1日中なにも食べずに過ごしていたことを知ったのはずっと後のことです。そんな環境に育った私が貧困家庭に対する援助を打ち切ると思いますか」と涙ながらに有権者に訴えた。

 その政権放送は翌日、ブラジル各紙の一面を飾り、ブラジル中の多くの人々がシルバ氏の言葉に涙したという。

(S)