飲食店で並んで待つ場合、行列が長ければやめる。それほどでなければ待つ。1974年に東京・上野の東京国立博物館で開かれた「モナ・リザ展」の時は相当並んだ。絵に近づいても止まることは許されない。モナ・リザを観(み)たことは確かだが、じっくりとは言えない
行列は先着優先が原則だ。飲食店やイベントの主催者にとっては面倒が少ない。抽選にすると手間がかかる。だから行列は減らない
行列に並ぶのも大変だが、混雑はなおさらだ。文芸評論家・小林秀雄の『ゴッホの手紙』に、美術館では学校の生徒が大勢見学していてゴッホの作品を観られないため、やむなく複製を陳列した場所でじっくり観ると、これが見事だったという話がある
ゴッホの実物はいいに決まっているが、複製だって立派なものだ。作品の魅力に触れる上では「実物以外は不可」とは言い切れない
展覧会の混雑は思ったほどではなかったが、電車の混雑は地獄のようだった。高校の3年間は朝の混雑に直面するしかなかった。東京は路線がいろいろあるので、「別の路線で行ってみよう」ということでいろいろ探ってみたが、路線を変えても混雑に大差はないことが分かった
大学に入ると授業時間がまちまちで、その時間に合わせて電車に乗るようになる。従って混雑体験は減った。さまざまな工夫をしながら行列や混雑に慣れていった。「満員電車なんか平気」というつわものは今でもいるだろうが、それはそれで個性の違いなのだろう。







