美学者の今村純子さんがフランスの思想家シモーヌ・ヴェイユ(1909~43年)に出会ったのは10代の頃だったという。出会ったといっても当時ヴェイユは既に故人で、著作物に出合ったという意味だ。その後、長く読み続けることに

『シモーヌ・ヴェイユ思想入門』(光文社新書)を書くのに5年もかかったということだから、その間、いつもこの思想家が隣にいたことになるのだろう。それを「原石の詰まった貴重な箱」と呼ぶ
今村さんは映画や文学と関連させてヴェイユの思想について書く。仏教学者の鈴木大拙と比較して論じるのは「平行線は無限遠で交わる」という終章。大拙とヴェイユの共通点を語っていく
平行線は交わらないが、2人は違った。宗教ではやがて交わるという観点を示す。大拙の父は医者で診療代や薬代は取らなかった。治療に対して礼をするか否かは医師と患者の関係によっていて、決定権は患者に
「そうした時代が妙に恋しい」と大拙は言う。6歳で父を失い、経済事情によって高等学校を退学した。出世の道をなくして大学予科にいた時代、鎌倉に参禅。「無限へのあこがれ」が大拙の宗教心となった
ヴェイユの最期は、ロンドンでの客死。死因は飢餓だった。「フランスの子供に配給されている以上のものは食べない」と自らに課したのは、祖国の「見知らぬ一人の幼児とつながろう」としたからだ。今村さんはそう解説する。愛の世界では平行線はいつか交わる。







