トップコラム名曲喫茶よ永遠なれ【上昇気流】

名曲喫茶よ永遠なれ【上昇気流】

 数十年ぶりに東京・渋谷の道玄坂にある名曲喫茶に入った。百(ひゃっ)軒(けん)店(だな)を少し入った所にある「名曲喫茶ライオン」。かつて渋谷駅周辺には何軒かあった名曲喫茶もここだけとなった

 店内に足を踏み入れると、そこは昭和にタイムスリップしたようなレトロな空間が広がる。壁際には店が誇る大スピーカーが置かれ、それに向かう形で2人掛けの席が並んでいる。ちょうど定時コンサートの時間で、モーツァルトの交響曲第36番「リンツ」が、素晴らしい立体音響で鳴り響いていた

 店の創業は昭和元(1926)年。「祝100周年 OB・OG一同より」と書かれた札の付いた花鉢が置かれている。かつての従業員も、店に特別な愛着があるのだろう。いずれにしても昭和100年を共に歩んだ店がこうして残っているのは、クラシックファンならずとも嬉(うれ)しいことだ

 意外だったのは、外国人客が3人ほどいたことだ。渋谷は外国人観光客が多いが、最近はレトロな場所で見掛けるようになった

 百軒店には、気流子もよく行ったとりかつ屋がある。最近はそんな地元の人しか知らないような店も外国人客で賑(にぎ)わっているという

 音楽喫茶、名曲喫茶というのは日本独特の文化である。BGMとして音楽を流すカフェなどは外国にもあるだろう。しかしジャズやクラシック音楽を聴かせるため、レコードを大音量で流す喫茶店は日本独自のものだ。日本にしかない良いものを外国人から教えてもらう時代になってきたとも言える。

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