トップコラムクリスマスソングと泥水の間で フィリピンから

クリスマスソングと泥水の間で フィリピンから

マニラ大聖堂とクリスマスデコレーション=マニラ市

 9月を迎え、フィリピンでは世界一長いと言われるクリスマスシーズン「バーマンス」が始まった。本来なら祝祭ムードに包まれる季節だが、今年は相次ぐ災禍が影を落としている。

 南西モンスーンは、マニラ首都圏などに1カ月近くも豪雨をもたらし、8月末には23時間で186㍉の降雨を記録。各地で洪水や大渋滞が発生し多数の死傷者が出た。さらにインドネシアの森林火災による深刻な大気汚染や、ビサヤ地方の電力不足による輪番停電も重なる。

 それでも人々は、冠水した道路をずぶ濡(ぬ)れで歩き、停電に耐えながら日常を維持する。その逞(たくま)しさはフィリピン人の大きな強みだ。

 しかし今回、より深刻なのは、政府が、洪水対策のマスタープランが何十年も前から存在しながら、実行されずに放置されてきたことを認めたことだ。自らの任期中に完成しない長期事業は、政治的な手柄になりにくいとして後回しにされてきたのだ。

 国内産業の育成を後回しにし、経済の柱として依存してきた海外出稼ぎ労働者の送金も、国際情勢の悪化で帰国者が増加し、海外依存の脆(もろ)さを露呈している。

 国民の忍耐と適応力は美徳だ。しかし、それを政府の免罪符にしてはいけない。クリスマスソングが流れる街で、人々が泥水の中を歩く。この光景を、いつまでも当たり前にしてはいけない。

(F)

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