トップコラム川重の次世代造船所【上昇気流】

川重の次世代造船所【上昇気流】

 人工知能(AI)が物理法則を理解し、機械やロボットを動かす「フィジカルAI」が注目を集めている。現実空間の状況を認識・判断し、自律的に動き、他に働き掛ける存在だ

川崎重工業神戸工場と整備を受ける海上自衛隊・2隻の潜水艦(画面右)。右の岸壁手前に接岸しているのは「おやしお型」=8日、神戸市中央区(時事)
川崎重工業神戸工場と整備を受ける海上自衛隊・2隻の潜水艦(画面右)。右の岸壁手前に接岸しているのは「おやしお型」=8日、神戸市中央区(時事)

 このフィジカルAI技術を用いて、川崎重工業は次世代造船所の建造プロジェクトを発足させた。川重がこれまで蓄積してきた造船現場の豊富なデータや知見を学習したAIが、工程上の問題を解決し、作業効率を上げることを狙う

 船の建造は設計から完成まで数多くの複雑な工程を要する。フィジカルAI技術はまずシミュレーション上で、材料加工、船体組み立て、試運転までを1カ所で統括する。造船所全体が一つのシステムとして〝有機体〟のようにつながるところがミソ

 各ロボットの実力を検証しながら、ロボットの技巧でシステム上の不備を埋めていく。人にすべてを任せず、かといってロボットによる生産活動の独占や偏在などもない

 文字通り、人間に忠実で主体性を持つロボットが生産性の向上に尽くすことになる。まずは香川県坂出市の坂出工場で始めるが、将来的には運用、保守への活用など船舶のライフサイクル全体を対象とするという

 フィジカルAI技術を日本が得意とする分野に育てたい。一方、人型ロボットの量産化に血道を上げる中国。人間が主体の社会でなく、一部の人間が操るAIロボットが人間社会を支配する世界を企図しているように見える。川重の次世代造船所とは対照的だ。

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