ロシアのプーチン大統領が北方領土の択捉島に入ったことは、わが国周辺の安全保障情勢が新たな段階を迎える予兆となった。それはまだ明確ではないが、中国、北朝鮮、ロシアによる「3正面」の脅威網の形成と映るからだ。
中国は日中関係を打開する上で、あくまで高市早苗首相の「台湾有事」答弁の撤回を求めている。そのための対話拒否や邦人の拘束、日本周辺での頻繁な軍事演習といった「威圧」を強めている。だが、高市政権の揺るがぬ姿勢に焦りも見られる。
5月の北京での米中首脳会談では、習近平国家主席がトランプ大統領に日本への批判をぶちまけたともいう。同盟国にも厳しい対応を取るトランプ氏に期待するほどだから、よほど頭を悩ませているのだろう。
だが、中国の焦りは「台湾」答弁だけでなく、日本が対米依存から自立ならぬ「自律」の動きを本格化させたことにある。日本は日米安保を基軸としつつも、フィリピンやオーストラリアなどアジア友邦諸国、さらには欧州の北大西洋条約機構(NATO)各国との安保連携を進めている。
それだけに中国は、北朝鮮、ロシアとの対日包囲網の構築を急ぐわけだ。北方領土の問題もロシアの対日カードであり、また中国へのポーズでもある。
「台湾有事は日本有事」というのは日本にとって当然の認識だが、台湾有事で日米の関与を排除するための北朝鮮、ロシアからの牽制(けんせい)が視野に入ってきた。中露朝の3正面そして北方の陽動作戦に備えねばなるまい。







