日本へ帰国するたび、必ずスーパーの生鮮食品売り場で足を止めてしまう。日本の果物には、財布のひもを緩めてしまうことが少なくない。

白いネットに包まれ、宝石のように並ぶ桃やメロン。1個数百円から、時には数千円という値札が付いている。しかし、ひと口食べれば、その絶妙な甘さと香りに圧倒される。そこには、土づくりから栽培、選別まで、生産者の緻密な技術と情熱が詰まっている。まさに日本の職人精神が生んだ、四季折々の芸術品だ。
一方、ブラジルは世界有数の農業大国だ。活気あふれる市場へ行けば、マンゴーやパパイアが豪快に山積みにされ、売り子の威勢のいい声とともに驚くほど手頃な価格で売られている。マンゴーやメロンは朝の食卓にも並ぶ身近な存在だ。美しい包装はないが、南国の太陽をたっぷり浴びて育った果実には、自然そのものの力強く濃厚な味わいがある。
この違いは、両国の物価や好みの差だけではないと感じる。日本では、生産者が技術を磨き、品種を改良しながら「最高の体験」を追求し、それを消費者が慈しむ文化がある。一方、ブラジルでは、大自然の圧倒的な恩恵を誰もが日常の中でぜいたくに味わう文化が根付いている。
海外で暮らすと、自国の当たり前が決して世界共通ではないことに気付く。技術と情熱が生んだ果物が人の心に感動を与える一方、身近な果物が、人々の日常を豊かにし、生きる力を与えることもある。豊かさの形は一つではない、果物の甘さの中には、そんな真実が潜んでいるのかもしれない。(S)







