ブラジルで暮らしていると、日本では想像しにくい「理不尽」と向き合う場面が少なくない。先日も、解約したはずの携帯電話会社経由のサブスク(動画配信サービス)が、システムの不具合で勝手に再契約されるという珍事に遭遇した。
ブラジルの通信会社のカスタマーサービスは、利用者の評判が良くない。電話がつながらない、担当者を何度も代えられるといった経験は珍しくなく、少額の不当請求なら諦める人も多い。しかし、ここで力を発揮する仕組みがある。政府の通信規制機関「アナテル(ANATEL)」が運営する消費者苦情システムだ。
今回は通信会社の窓口を飛ばし、サブスク解約の証拠と共にアナテルの消費者苦情フォームから申し立てた。数日後、携帯電話会社から直接連絡が届き、不手際へのおわびがあり、サブスクの解約と不当請求のキャンセルが滞りなく行われたことが告げられた。
ブラジルには、窓口対応の遅さや官僚的な手続きへの不満は根強くある。一方で、行政のデジタル化や消費者保護の仕組みには、日本人が驚くほど実用的なものも存在する。
行政手続きの煩雑さなどから「混沌(こんとん)の国」とも呼ばれるブラジルだが、その混沌を乗り越えるための仕組みもまた独自に発達している。理不尽に出合った時、ただ理不尽を受け入れるのではなく、諦めずに動き、正しいカードを切れば巨大企業を動かすことも可能だ。
ブラジルの日常を快適に生き抜く秘訣(ひけつ)は、理不尽を受け入れる我慢強さや諦めではない。意外なほど強力な「仕組み」を知っているかどうかなのだ。(S)






