ビバルディの作曲したバイオリン・コンチェルト「四季」は、標題音楽の最も優れた作品だ。楽想の豊かさ、鮮やかさ、技巧の面白さなど、今もファンを魅了し続けている
独奏バイオリンのパートには作曲の基になった詩があった。夏の部分はこのようなものだ。「焼け付くような太陽の下で、牧人も羊たちもうつうつとしている。カッコウ、キジバト、ゴシキヒワの鳴き声が聞こえる」
作曲家自身による詩かどうかは分からないが、イタリアで作られた曲で、日本の夏であれば、まずは蝉(セミ)の声といったところだろう。日本人の作曲家で、蝉の声で夏を描写した人はいただろうか
神父でもあったビバルディが仕事をしたのは、ベネチアのピエタ養育院だった。ここを舞台にした映画「ヴィヴァルディと私」が先ごろ日本でも公開され、原作者ティツィアーノ・スカルパさんの同名の小説が河出書房新社から新装版で出版された
スカルパさんは史実を基にしつつ空想に身を任せて書いたという。ビバルディの心酔者でもあって、物語で強調したのはそれらの曲が女性の演奏者のための曲だったということ。ピエタ養育院は孤児の少女たちの教育施設だった
この物語によれば、鳥の声をまねてバイオリンで音にしたのは16歳の少女だった。自分でウグイスのまねをし、小さい子供たちにツバメの声をまねさせた。それを神父が知って「四季」という音楽に展開する。音楽の教育的効果は絶大だった。






