トップコラム光彩を放つ「歴史」とは【上昇気流】

光彩を放つ「歴史」とは【上昇気流】

 19世紀のドイツの歴史家ランケは「近代歴史学の父」と呼ばれる。実証主義に基づく科学的な歴史学を確立したからだが、東大名誉教授で歴史学者の樺山紘一氏は「学問としてみれば、慶賀すべき」としつつも、「歴史の多様な可能性に蓋をする結果に陥ったことも事実」と指摘する

 神話、叙事詩、伝説、説話などを事実に適さない叙述形式として史料から排除したからで、「真偽で検証しえないからといって、わたしたちの過去から排除できるのだろうか。そこからは、『科学』の名のもとに、ごく痩せ細った惨めな過去が顔をのぞかせるばかりのことではあるまいか」と疑問を呈している

 樺山氏のこの指摘は週刊朝日百科『世界の文学10 歴史と文学』(1999年刊)の巻頭言にある。標題には「神話、叙事詩、時代小説…無数の『歴史書』が光彩を放っている」とあった

 朝日百科は「歴史記述の原点」に紀元前5世紀のギリシャの歴史家ヘロドトスの『歴史』(全9巻)を挙げる。ペルシャ戦争を単なる出来事の羅列でなく、東洋と西洋の衝突という広い見地から語る一大叙事詩だ。『歴史』の原題はギリシャ語で探求を意味する「ヒストリア」

 日本語の「歴史」は明治初期の和製漢語で、記録を意味する「史」と「経る」という意味の「歴」を合わせヒストリアの趣旨を持たせている

 改正皇室典範を巡る論議では「ごく痩せ細った惨めな過去」に執着するメディアが少なからずあった。そう思うのは気流子だけか。

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