トップコラム「公共の福祉」を厳しく問う 【政界一喝】

「公共の福祉」を厳しく問う 【政界一喝】

米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長=2020年1月31日、ワシントン(AFP時事)
米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長=2020年1月31日、ワシントン(AFP時事)

 新型コロナワクチンの接種で被害を受けたとして、遺族や後遺症患者らが国に損害賠償を求める集団訴訟の第3次提訴が行われた。1次、2次を含め原告ら63人は総額約4億3900万円を請求しているが、メディアの報道は少なく、国民の関心も限られている。

 厚生労働省の「被害救済制度」では、今年4月までに死亡関連で1000件余り、副反応で9400件余りが既に認定され、国が給付を行っている。国家が被害を認めても、原告らが訴訟に踏み切る動機は明確だ。ワクチンの効能を強調する一方、リスク説明が不足し、接種における国民の「自己決定権」を事実上剥奪した行政の在り方を問うているのだ。

 世界的大流行(パンデミック)当時、政府や専門家は「集団免疫の獲得」という語り口(ナラティブ)を連呼した。公益優先の動きが、個人の身体リスクへの懸念を後回しにする同調圧力を生み、憲法上の「公共の福祉」という法的な大義名分と相まって、国民の判断を誘導したことは疑いようがない。

 近代憲法で公共の福祉とは、本来、個人の人権同士の衝突を調整する原理であったはずだ。しかし、わが国の行政運用ではしばしば、全体のために個人の権利を制限し犠牲にする方便として解釈されがちである。

 最高裁において宗教法人世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への解散命令を確定した判断(22日付)でも、公共の福祉の危うい適用が見え隠れする。国側は「法人格の剥奪に過ぎず、信教の自由は侵さない」とするが、実質的な組織への「死刑宣告」であるとの指摘は根強い。

 日本が批准する国際人権規約(自由権規約18条)が保障する思想・良心・宗教の自由に対し、国連人権委員会は公共の福祉がそれらの自由を制限する根拠とはなり得ないとの見解を示す。多数派の世論や感情を背景に、公共の福祉の名の下で一組織の命運を絶つ前例は、他の首をも絞めかねない。

 「全体の利益と個人の制限」という構図はコロナ対策の源流、米国でも今、激しく揺さぶられている。 トゥルシ・ギャバード前国家情報長官は退任(19日)に際し、400㌻に及ぶ関連ファイルを機密解除・公開した。

 ウイルスが米国予算を用いた中国・武漢ウイルス研究所での「機能獲得研究」に端を発したことや、その後のパンデミックを巡る真相究明において、アンソニー・ファウチ氏(米国立アレルギー・感染症研究所元所長)が隠蔽(いんぺい)工作や米議会での偽証に関与した内容が含まれる。

 120万人超という膨大な犠牲者を出した米国で、嘘(うそ)やデータ操作などを白日の下にさらす動きが進む中、日本としても当時、米国が発信した「科学的合意」を丸のみして、自国民に接種を迫った経緯に立ち返るべきだ。公共の福祉という大義の下、感染拡大の防止を掲げて行われた行政の不透明な意思決定を徹底検証し、犠牲者の権利回復に努める義務が国にはある。

 第3次提訴では26歳の息子を亡くした両親が意見陳述を行った。若者層に致死性が低いはずのウイルスを免れるためのワクチンで、健常な若者が急死した不条理。国や製薬会社が当時、把握しながら隠蔽していた副反応リスクはなかったのか。司法には、正当な判断を求めたい。

 国民も無関心ではいられない。パンデミック対策を重大事項として再認識し、行政における公共の福祉の適用の在り方を厳しく問う契機としなければならない。(駿馬)

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