歌手の美輪明宏さんは昭和の時代に「ヨイトマケの唄」で母と子の愛情を歌い上げた。同じ頃、東京都練馬区の少年鑑別所、いわゆる練馬鑑別所を歌った「ネリカン・ブルース」という曲もあった。こちらは再犯を重ね奈落の底へ落ちていく暗い内容で、藤圭子さんらが歌った。
明と暗、愛と虚無とでも言うべき対照的な二つの歌の話を、かつて東京保護観察所で聞いた。保護観察官は時に厳しく強制的な措置を取る父性愛。保護司はひたすら愛情を注ぎ込む母性愛。「いかなる人にも厳父慈母の心で更生を目指します」と。
戦前のキリスト者、内村鑑三は『代表的日本人』で江戸期の米沢藩主、上杉鷹山の治世を褒める。鷹山は領内に行政の「教導出役」と警務の「廻村横目」の役人を置き、出役には「地蔵の慈悲を主とし、内に不動の憤怒を含むべし」、横目には「閻魔の憤怒を表し、内に地蔵の慈悲を含むべし」と諭した。
「日本警察の父」と呼ばれる川路利良の語録で明治12(1879)年に作成された『警察手眼(しゅげん)』にはこうある。「警察官の心は、常に仁愛と助け合いの精神を持つべきである。それゆえ、警察権の行使もまた、仁慈の精神に基づくべきである」。
きょうは「おまわりさんの日」である。明治7(1874)年のきょう、巡査制度が導入されたことに由来する。
その職務倫理に思いを巡らすと「伝統的な価値観」に行き着く。それは父母の愛。日本社会が見失いつつある「家族の絆」である。






