トップコラム抑止力の効かないクマ【上昇気流】

抑止力の効かないクマ【上昇気流】

ニホンツキノワグマ

 「アーバンベア」なる言葉が一般化してきた。“郊外クマ”というのか、クマの人里への出没が騒がれて久しいが、今や都市中心部にも生息圏を拡大してきた感がある。クマと人間の生活境界線が壊れてきた兆しなのか。

 先日は福島市内、それも駅近くにクマが出没し人が襲われる事案が発生した。同じ市内に住む知人に連絡を取ると、「本当に危ない。近かった。普段から車で移動する生活をして気を付けている」と緊張感が伝わった。

 この事案では、工場に逃げ込んだクマが施錠した窓を自力で開けて逃げたというから“知能クマ”の様相すら出てきた。水道の蛇口を自分でひねって飲む姿も目撃されている。この分では店や公共施設のドアを手動に切り替える対策も心もとない。

 暖かくなって冬眠から覚め、食べ物を求めて活発に動き始めた一時的な現象というだけでは済まされまい。エサの希少化や、「学習したクマ」「人間に慣れたクマ」といった生態変化と単純に説明できない不気味さが伴う。

 古来、クマにもそれなりの縄張り意識があり、人間に対してもそうだった。が、かつての伝統的な方法で狩猟するマタギは激減し、山中での人の気配がなくなった。逆に、人の“匂い付け”というか縄張りというか「抑止力」が効かなくなったこともあろう。

 何事につけ、空白の地を埋めようとする本能はクマに限らない。人間社会においてをやである。クマの際限ない出没は何かの暗示なのだろうか。

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