トップコラム広がるクマ出没の影響【上昇気流】

広がるクマ出没の影響【上昇気流】

9日に宇都宮市内で捕獲されたクマ(同市提供)
9日に宇都宮市内で捕獲されたクマ(同市提供)

 連日、クマの市街地出没のニュースが絶えない。昨年度クマによる人身被害は過去最多となったが、13人に上った死者のうち、最初に発生したのが6月22日。今年度は4月21日で、既に5人が犠牲になっている。昨年度を上回る最悪のペースだ。

 今年4月の出没件数は1759件で、昨年同時期と比べ倍増している。「去年人の生活圏で食べ物を得られると学習したクマが多く、近くに居ついて早い時期から街に侵入するようになったのでは」(小池伸介・東京農工大学大学院教授)との見方が強い。

 市街地でクマが出没した宇都宮市では、小中学校94校を3日間臨時休校した。いつどこでクマと出くわすか分からない状況では、安心して外に出ることもできない。

 春は山菜採りのシーズンで田舎ではそれを楽しみにする人、生業(なりわい)とする人も少なくない。野山に多くのハイカーが出掛けるが、鈴を付けるなどの対策をしても、不安な気持ちでは楽しさも半減する。

 新潟県・佐渡島には金北山を目指すトレッキングルートがあり、さまざまな高山植物が見られる。これは佐渡にクマやシカなど大型野生動物がいないためだ。これを紹介するNHKの旅番組によると、佐渡行きを考えているハイカーから「クマが出ませんか」との質問があるという。

 これまで成り立っていたクマと人間のすみ分けが崩れた背景には、地方での著しい人口減や耕作放棄地の増加など、国の基本的問題がある。長期的視点での対策が必要だ。

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