先日、岩波新書『南京事件 新版』(笠原十九司(とくし)著)の絶版を求める記者会見があった。主催は、一般社団法人国際歴史論戦研究所だ。同研究所によると、同書には文献操作上の重大な誤りがあり、旧版で捏造(ねつぞう)した写真が掲載された件も含め問題点があるため、書店側に回答を求めたが改善を示すものがなく、岩波書店に絶版を要求したという。
さらに著者の笠原十九司氏は、当時を知る第1級資料である『安全地帯国際委員会の記録』から引用していないというのだ。
日本の歴史学の問題点とされるのは、権威者の発言によって批判すらできない事態に陥ることだ。さらに現地調査を行わない傾向にあるという。資料が正しいかどうかを見極める作業が重要であり、一方で、正しいと思っていた史実が誤りであった場合には、それと真摯(しんし)に向き合わなければならない。
その典型的な例が、2000年に起きた旧石器捏造事件だ。「神の手」といわれたある研究者によって日本考古学が崩壊した事件である。その教授には絶大な信頼が寄せられていたため、異論を唱えにくい状況にあったという。この反省から、考古学界は地質学や地理学など、専門外の視点を取り入れ、時代を判定するようになった。
それに対し笠原氏は、南京に関する対談が企画された際、虐殺がなかったとする説を唱えた人物を「専門家ではない」として対談を拒否した。近現代こそ、専門外からの意見を聞くべきで、第1級といわれる歴史的資料を真摯に検討し、議論し合うことが大事なのではないか。
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