トップコラム国民の「情報主権」覚醒を【政界一喝】

国民の「情報主権」覚醒を【政界一喝】

「国家情報会議」設置法が賛成多数で可決、成立した参院本会議=27日午後、国会内
「国家情報会議」設置法が賛成多数で可決、成立した参院本会議=27日午後、国会内

 沖縄県名護市の辺野古沖転覆事故(3月16日)を巡り捜査を進めている海上保安庁(海保)は、行政機関の一つだが、警察と同様に捜査権を持つ特殊性がある。一方で海保は、国家情報会議設置法(5月27日成立)で強化される政府のインテリジェンス(情報収集・分析)活動において、わが国の全領海の「縁」で安全保障のための一次情報収集の役割も担ってきた。

 特に沖縄周辺海域は、外国漁船を含む台湾海峡・東シナ海の海上交通、海洋資源など平時の動向に加え、尖閣諸島周辺の領海侵犯を含む中国海警局の動向、海外との通信を支える海底ケーブルの保全など、わが国の主権や国民の安全に関わる戦略情報を収集する最前線だ。

 転じて国会周辺では、同設置法を巡り「市民団体」が、「監視社会に反対」などのプラカードを掲げ反対活動を行った。国境守護の緊張感ある沖縄周辺での前線任務が24時間態勢である一方、対極に位置付けられる日本政治の中心・永田町で、安易に法案の趣旨でない監視をことさら問題化し、一般市民を装って政治利用している。オールドメディアがこうした示威活動を報道し、印象操作に加担するかのような現実も相変わらずである。

 このアンバランスな構図の根底には、長く平和を享受してきた社会の副作用のごとき平和ボケ、国民レベルの安全保障意識の希薄さがある。加えて、設置法でようやく本格的に動きだした政府のインテリジェンス機能、また日本国民全体を巻き込んだ情報戦の現実に、認識が追い付いていないことも要因だろう。

 経済力・軍事力の拡大を伴う中国のわが国への圧力外交に対する国民の忌避感は近年、定着してきた。しかし、「再軍備」や「軍国主義復活」などと曲解し、高市早苗政権の安全保障政策を批判するのは、中国による情報戦だ。物理的に武器弾薬に手を付ける以前に優勢勝ちするという中国の伝統戦略からして、国民はこうした情報戦にこそ、今日の主戦場があることを認識する必要がある。

 政府のインテリジェンス機能を強化する設置法の国会審議では、「情報主権」――国家が情報・データを自ら管理し、外国に依存しない権利――の価値観に国民が気付かされることとなった。だがこれは、国家の安全保障だけでなく、国民一人ひとりが日々どの情報を選び、何を信じ、どの言葉を使うかという、民主主義の根幹に関わる「生活の主権」でもある。

 自衛隊と共に、警察庁の外事部門、防衛省の情報本部、国交省の海保、外務省の国際テロ情報収集ユニットなどが情報面で使命感を持って、脆弱(ぜいじゃく)な日本の安全保障体制の補完に取り組んできた。設置法によって各機関の重要情報は首相直下の総合調整機能の中で生かされ、インテリジェンス体制は強化される。また、通信インフラを維持管理する民間企業、サイバー攻撃に日夜対処する技術者、研究者らも静かに日本の安全保障を支えている。

 だが情報後進国であるわが国が人工知能(AI)を含めた高度化かつ複雑化した情報戦の社会を乗り切るには、情報主権の考え方を広く、国家の主権者たる国民個々人に落とし込むことが不可欠だ。すなわち国民が生活上の言葉と行動の主権意識に目覚め、生活の延長線上で物事を適宜判断しながら国防意識を高めていかねばなるまい。情報力強化による日本の国力強化政策は、国民レベルの情報主権強化によって成し遂げられよう。

(駿馬)

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