トップコラムトキ保護一筋の生涯【上昇気流】

トキ保護一筋の生涯【上昇気流】

 能登の空を半世紀ぶりに国の特別天然記念物トキが舞った。秋篠宮殿下御夫妻をお迎えして、本州初のトキの放鳥が石川県羽咋(はくい)市で行われた。式典には、70年以上にわたりトキの保護活動を行ってきた101歳の村本義雄さんの晴れやかな姿があった

羽ばたくトキ(佐渡トキ保護センター提供)

 村本さんが子供の頃、トキは身近な鳥だった。戦後、その姿を見ることができなくなり、図鑑には本州のトキは絶滅したと書かれていた。しかし能登にいるはずだと信じ、昭和31年の夏、4羽が池で餌を漁(あさ)る姿をカメラに収めることに成功する

 それから村本さんのトキ保護のための献身的な歩みが始まる。「保護の札背負いて吾の先に行く子等の願いは朱鷺(とき)の舞う空」。これは保護団体を結成して、禁猟区の立て札を立てたことを歌った村本さんの短歌。その歩みを振り返った歌集『ニッポニア ニッポン』(北國新聞社)に収められた。トキの学名を書名とした

 日本産トキは絶滅したが、中国から提供を受けたペアを新潟県・佐渡島で繁殖させ500羽近くが生息するに至った。背景には、村本さんの中国での保護活動支援がある

 昭和44年、村本さんは日本鳥類保護連盟の常陸宮総裁賞を受賞した。「陰口に気違いなどと言わるるもわれ一筋にこの道を来し」はその時の感慨を詠んだものだ

 昨年気流子が取材した際には「トキが能登に定着できるかどうか、冬場のエサの確保が問題」と語っていた。その目に浮かんでいるのは、トキが定着した能登の里山の風景だ。

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