トップコラムさまざまな下克上【上昇気流】

さまざまな下克上【上昇気流】

 半世紀以上も前、長期政権の佐藤栄作内閣が終わった。田中角栄の台頭が理由だ。佐藤は田中が力を付けてきたのに気付かなかった。老川祥一(しょういち)著『長期政権の条件』(新潮新書/新刊)で知った話だ。田中による下克上だったが、田中も竹下登らの「創政会」の登場で政界を追われた

 「田中ほどの人物が創政会の動向になぜ気づかなかったのだろう」「派閥の規模に問題があるのではないか」と著者は言う。派閥が100人を超えると情報回路が特定の側近に限られ、派閥内の不満が上に届きにくくなる。カール・シュミット(ドイツの政治哲学者)が「権力の回廊」という言葉で指摘したものだ

 一方、旧ソ連の独裁者スターリンの死を巡る混乱は、滑稽だが悲惨だ。脳卒中を起こす前日の夜、スターリンは4人の最高幹部を自室に呼んだ。その後4人は帰宅した

 翌日、スターリンが部屋で倒れているのを護衛官が発見。4人はその日の夜中に集合したが、スターリンの部屋には入らず、護衛官が最高指導者の状態を確認した。4人は「睡眠中」との認識で一致し、帰宅した

 「最高指導者の哀れな姿に立ち会うのは気まずい」というのが理由だった。それから医師団が呼ばれ、回復不能を確認。4人は幹部会を招集し、やがてフルシチョフがソ連共産党のトップとなった

 独裁国家と民主主義国家ではだいぶ違う。憲法12条には、自由と権利は不断の努力によって保持しなければならないとある。

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