トップコラム自立的安保政策推進 対中“逆サラミ戦術”を【潮汐閑談】

自立的安保政策推進 対中“逆サラミ戦術”を【潮汐閑談】

 今月は米中首脳会談、そして中露首脳会談と続いた。米国と中国という世界の2大プレーヤーが、しかもホルムズ海峡封鎖という世界経済はじめ今後の国際秩序の動向を左右する状況下での会談だ。主要国がその会談内容に固唾をのんだ。高市早苗首相がいち早く、エアフォースワンで帰途中のトランプ米大統領との電話会談でその感触を得ようとしたのは当然の判断だった。

 米中首脳会談は、イラン問題と2国間通商、そして台湾問題が主要議題とされた。しかし、隠れた大きな問題は中国にとって「日本問題」ではなかったか。直後のロシアのプーチン大統領との会談では共同声明で「日本の急速な再軍備路線は地域の平和と安定に深刻な脅威をもたらしている」と日本を名指しで非難、さらに「新たな軍国主義と再軍備化を放棄するよう求める」とまで盛り込んだ。対日敵視戦略の公然たる宣言ともいえる異例さだ。これは中国側の強い意向が反映しているといえよう。

 南・東シナ海はじめ覇権的拡張主義をいとわない中国、またウクライナ侵攻のロシアからのこうした言い分は、片腹痛いと言わざるを得ない。が、それだけ日本の動向に神経を尖(とが)らせているという証左でもある。習近平国家主席が来週にも北朝鮮を訪問するという。実現すれば2019年6月以来、7年ぶりの訪朝だ。もちろん対米戦略としての中露朝の陣容立て直しの一環ではあるが、ここで日本というブロッケイド(障害)に対する警戒心が大きくなったのは否定できない。

 何が中国をこうまで駆り立たせるのか。よく脅威は能力と意思で測られるという(脅威=能力×意思)。軍事能力が高く、(侵攻の)意思がありと判断されれば脅威は高まる。逆も真なりで「意思」がなければ脅威度は減るか、ないことになる。米国が世界第一の軍事大国であっても、わが国にとって同盟国である以上、いわゆる軍事的「脅威」はないのと同じだ。ただ、「意思」は一夜で変わり得る。まして“敵性国家”に対しては常にその意図や動向を的確に判断できる「インテリジェンス」能力が不可欠なのはいうまでもない。

 中国は昨年11月の高市首相のいわゆる「台湾有事」答弁で強い反発を示し、さまざまな対日牽制(けんせい)、規制を取ってきた。だがそれは高市答弁を口実として、「強く豊かな日本」構築を目指す高市政権をいかに短期間で終わらせるかに終始した姿勢に見える。

 一方、わが国は安倍政権以降、限定的な集団的自衛権の行使、敵基地攻撃能力の向上、そして高市政権下における同盟国・同志国向け武器禁輸の撤廃、そして国家情報局の創設に向けた一連の安全保障政策の強化は、自立的な防衛体制に向けた画期的な転換だろう。もちろんこれは日米同盟を基軸としつつも、今後の不透明な安保情勢において対米依存度を下げていく国家としての生き残りを策す真剣な対応でもある。

 中国にはこうした日本の「普通の国」に向けた自立的な戦略が将来の“脅威”と映るのか。中国はわが国領海等を恒常的に侵犯しながらその既成事実を積み重ねる、いわゆる「サラミ戦術」を得意とする。わが国はその向こうを張ってというわけではないが、自立的安全保障政策を粘り強く推し進め、日本側の平和的な、そして強固な姿勢を取っていく“逆サラミ戦術”で浸透させていく必要があるのではないか。

(黒木正博)

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