トップコラム身近に感じる路線バスの廃止

身近に感じる路線バスの廃止

 路線バスの減便、廃止が首都圏でも徐々に広がっている。普段の生活で感じることはないが、山に行くとそれを実感する。

 例えば東京都八王子市の高尾山。年間270万人近くが訪れる人気の山だが、今年3月末で八王子駅と神奈川県・相模湖駅間のバス路線が廃止となった。

 高尾山は京王線高尾山口駅から登るのが一般的だが、シーズン中は大混雑する。筆者のような山好きは人を避け、城山湖や津久井湖が見える南高尾山稜(さんりょう)をよく歩く。バス路線の廃止により、大垂水峠から南高尾山稜を縦走したり、高尾山から小仏城山を巡り相模湖へ下ったりするのが難しくなる。

 車を持たない一部の山好きの高齢者が困るだけで影響は小さい。とはいえ、やはり高尾山口駅に登山者が集中するのは高尾山の生態系を守る上では望ましくない。

 人間の生活圏に近い高尾山は豊かな生物多様性が保持されている希少な山域だが、この20、30年で1600あった植物種が1320に激減している。4月中旬、数年ぶりに南高尾の入沢川沿いに広がるニリンソウ群生地を訪れたが、花の密度が薄くなっていた。かつて普通に見られたフクジュソウやエビネも減っている。

 理由は気候変動による環境変化がもたらす食害だけではない。高尾山の自然環境保全に取り組むネイチャーガイドの坂田昌子さんによると、オーバーユース、盗掘など人為的な原因も大きいという。

 路線バスや山小屋で土日祝日のみ運行・営業する所が増えると、登山者は週末に集中する。当然、登山道は荒れ、生物の多様性が脅かされる。

 人口が減るということはあらゆる所で多様性が失われ、選択の幅が狭められることを意味する。身近な山も車無しでは登れない時代になりつつある。(光)

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