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春バラの季節に白菊思う

ツル薔薇
ツル薔薇

 柄にもなく今月、バラの名所を3カ所も訪れた。最初は大型連休中で、帰省先近くの冠山総合公園(山口県光市)。梅園で知られるが、バラ園もあり330種、1400株植えられている。さすがにまだ三分咲きだった。

 先週は、京成バラ園(千葉県八千代市)と旧古河庭園(東京都北区)に出掛けた。京成バラ園は1600種、1万株を誇る関東最大級のバラ園で、ちょうど見頃だった。赤、白、黄色など色鮮やかなバラが咲き誇り、芳香も加わって広い園は別世界。

園を後にし駅に向かう途中、道端にひっそり咲く黄色いバラを見て、アイルランド民謡の一節を思い出した。<夏の名残のバラ ひとり寂しく咲いている 愛(いと)しき仲間たちはみな枯れ果てた>

 「夏の名残の薔薇(ばら)」。作詞は19世紀の詩人トーマス・ムーア。日本には明治時代、里見義(ただし)の詩を付けて紹介された。唱歌「庭の千草」だ。

 <ああ白菊 ああ白菊 ひとり遅れて咲きにけり>と聞けば、ある年齢以上の人なら誰もが懐かしく思い出すはず。共に愛する人に先立たれた悲しさを表しているが、日本人にはバラよりも白菊の方が、その思いは伝わるのではないか。

 旧古河庭園は、バラ園の規模は小さいが、毎年この季節、必ず新聞紙面を飾るから知っている人が多いだろう。ルネサンス風の洋館と西洋庭園は鹿鳴館やニコライ堂などを手掛けた英国人建築家ジョサイア・コンドルの設計。ウイークデーだったが、大勢の人が訪れ、石造りの建物と大輪のバラが織り成す異国情緒に魅了されていた。

 洋風庭園のほか日本庭園も配している。明治・大正期の庭師・小川治兵衛の作で、こちらは人がまばら。一度に和洋の名園を楽しめたが、どちらかと言えば、筆者の足は、静かな空間と枯山水の景観に止まる時間が長かった。

(森)

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