トップコラム昭和30年代東映アニメの名作【東風西風】

昭和30年代東映アニメの名作【東風西風】

 東京・神保町シアターの特集「田中澄江と水木洋子――名作の陰に女性脚本家あり」で、実写映画に交じり東映のアニメ映画『安寿と厨子王丸(あんじゅとずしおうまる)』が上映された。

 森鴎外の『山椒大夫(さんしょうだゆう)』を田中澄江が脚本化、監督は藪下泰司、芹川有吾。昭和36(1961)年公開のカラー長編で、イタリアのリミニ国際映画祭で監督賞を受賞している。

 アニメ映画では普通、観客は若年層が中心だが、この映画は圧倒的に高齢者が多かった。公開時に観(み)たあの感動をもう一度という感じの人たちだ。かく言うコラム子もその一人だったが、小学生の時に観た時の感動が蘇(よみがえ)ると共に、また別の感慨もあった。

 一言でいえば、動く絵巻物、動くやまと絵ということになるだろう。動物が話をするところはディズニーアニメを真似(まね)ている。その一方で、ディズニーの向こうを張った日本らしさが感じられ、世界的に高い評価を受ける現在の日本アニメの出発点となっていることが分かる

 家族が散り散りとなるが、最後は立派な貴族となった厨子王が母と再会する家族愛の物語であり、雅な貴族文化や帝(みかど)を中心とした秩序が根底にある。文部省選定、日本PTA全国協議会特選の教育映画で、今から見ると、子供たちに迎合していないのが、却(かえ)って新鮮である。

 声優陣も、安寿が佐久間良子、厨子王は少年時代を風間杜夫、青年時代を北大路欣也、八汐は山田五十鈴(いすず)、山椒大夫が東野英治郎など豪華な顔触れ。東映の力の入れようが窺(うかが)われる。

(晋)

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