トップコラム塩船観音寺の火渡り【上昇気流】

塩船観音寺の火渡り【上昇気流】

塩船観音寺
塩船観音寺

 東京都青梅市に新東京百景に選ばれた塩船観音寺がある。真言宗醍醐(だいご)派の別格本山で、山並みを背にした静かで美しい環境にある。4月と5月はツツジが満開の季節で、境内を包む斜面が赤く染まる。

 「つつじまつり」が開かれていた今月3日、火渡りの行事が行われた。境内は参拝者であふれていた。正しくは柴燈(さいとう)大護摩供(おおごまく)火生三昧(かしょうざんまい)といい、柴燈は野外を、大護摩供は火を、火生三昧は火渡りを意味する。

 大導師は住職の橋本公延師。不動明王像の前の広場に巨大な護摩壇が設置されていて、ほら貝の音とともに修験者(しゅげんじゃ)が入場し、大導師が招待され、「山伏問答」「火切加持」「床型」「神斧(じんぷ)」「宝剣」「法弓」と続く。

 行者は自分の肉身を大日如来と観じ、周囲の魔を断ち、自己の心の魔を断つ。大空に弓で矢を射るのは道場内に魔を入れさせないためだ。「願文」を奉読し、清浄な水「閼伽(あか)」を本尊に供えて点火。

 緑のヒノキの葉で覆われた大護摩は実によく燃える。煙だけで火の粉も出ない。燃え尽きる頃、火の中に道を作り、灰をならし、大導師から順番に通って行く。参拝者たちの番となって気流子も渡ってみた。

 裸足(はだし)の足の裏は熱くなかったが、両側で燃える火が風に煽(あお)られて熱風が肌に伝わってくる。もしもこの行事に、一連の神事がなく、加持がなかったら、火傷(やけど)をする可能性は否定できないだろう。厳しい修験道で、山岳遭難の記録が見当たらないのは、魔を断って登山が行われてきたからだと納得した。

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