トップコラム鯉のぼりが川を泳ぐ【上昇気流】

鯉のぼりが川を泳ぐ【上昇気流】

気持ちよさそうに泳いでいる大小のこいのぼり
気持ちよさそうに泳いでいる大小のこいのぼり

 こどもの日は、もともとは男の子の成長を願う端午の節句だ。最近は鯉(こい)のぼりが竿(さお)柱の上で空に翻る風景は、都会はもちろん田舎でもなかなか見ることができなくなった。

 その代わりに多くなったのが、川の両岸にロープを渡し、それにたくさんの鯉のぼりをつるして見せるという趣向。石川県金沢市の浅野川では川の中にロープを張り、約200本の鯉のぼりを付けて水中を泳がせている。初めて見る子供たちは、これが本来の姿だと思ってしまうのではないか。

 高齢者なら鯉のぼりの歌といえば、二つ浮かんでくるだろう。「やねよりたかい こいのぼり……」の童謡(作詞・近藤宮子)。そして「甍(いらか)の波と雲の波 重なる波の中空(なかぞら)を……」で始まる文部省唱歌だ。

 童謡の方は「おおきいまごいは おとうさん」と家族の情景として歌い、唱歌の方は鯉の滝登りに男児の成長、立身を重ねている。どちらも、空に泳ぐ鯉のぼりを歌っている。

 鯉のぼりは江戸時代、武家が男児の成長を願って、合戦に使用する幟(のぼり)や吹き流しを飾ったのが始まりという。それに対抗心を燃やした町人が、鯉の形をした吹き流しを創ったのだ。歌川広重の浮世絵「名所江戸百景 水道橋駿河台」には、前景に大きな鯉のぼり、中景に武家屋敷の幟や吹き流しが描かれている。

 江戸っ子の心意気から生まれたとも言える鯉のぼり。それが川を泳ぐのを見て、洒落(しゃれ)っ気のある江戸っ子たちも「なかなか乙だ」とは言わないだろう。

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