トップコラムオトシブミとの出合い【上昇気流】

オトシブミとの出合い【上昇気流】

 「落とし文去来の墓に拾ひけり」(喜多村鳩子)。向井去来(1704年没)は松尾芭蕉の高弟。毎年4月下旬ごろから5月中旬ごろにかけて、昆虫のオトシブミを見掛ける。図鑑やインターネットで見ると成虫は宝石のように綺麗(きれい)だ。愛好家には人気が高い。

 が、樹木が高い場合は、成虫に出合うことはめったにない。そんなわけで、日本では約85種類が知られると言われても、実際に見掛けたオトシブミの種類はなかなか分からない。

 オトシブミが卵を産み付ける揺籃(ようらん)は栗・クヌギ・ナラなど広葉樹の下に落ちている。3㌢ぐらいの大きさだが、親が揺籃を作るのにかかる時間は30分程度と言われる。研究者か愛好家が30分かけて観察した結果なのだろうから、そこは納得だ。意外に速い。

 コンクリートの道路に揺籃が落ちていると、余計なことだが、樹の下に移動させることにしている。揺籃は自分では動けない。陽光は厳しいだろうし、オトシブミに興味のない人が知らずに踏みつけることもあるはずだ。

 時に、干からびた揺籃に出合うこともある。中の卵は死んでしまった可能性が高そうだが、これまで揺籃を開いてみたことは一度もない。どうしても「開きたくない」という気持ちが先立ってしまう。

 毎年オトシブミに出合うが、個体数が増えたようにも減ったようにも感じられない。意外に安定的なようだ。周囲の環境が今後も維持されるならば、オトシブミがいなくなることはなさそうだ。

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