トップコラム「保守リベラル」の欺瞞 メディア、高市政権を迂回批判【潮汐閑談】

「保守リベラル」の欺瞞 メディア、高市政権を迂回批判【潮汐閑談】

 メディア、とくに近年「オールドメディア」などと揶揄(やゆ)的に呼称されている大手紙の一部で最近みられるのは、“保守リベラル”的論調だ。従来の左派主張を排しつつ、一方で保守系路線をも批判し時に戒める。むしろ後者に比重が置かれている感が強い。

 憲法改正、防衛力強化、スパイ防止法や武器輸出などを例に挙げれば、これに表立って否定や批判したりする見方はない。が、高市早苗政権の国会運営や一連の保守政策に対し、野党や自民党内の不満や批判という形を取って顕在化している。来年度予算成立の過程をみても、院の独自性を伝統とした参院自民党幹部の抵抗などに対して、高市首相の「傲慢(ごうまん)さ」といった批判がとくにテレビキャスターなどから出た。

 こうしたスタンスは、メディアとして与野党に対して公正・中立を装ったように見えるが、根底には高市政権に対する強い警戒感と抵抗感が隠せないのである。もっとも、大手メディアにとっては、どちらにも与(くみ)しないという姿勢をとることでその使命と役割を果たしているということなのであろう。

 保守系紙(メディア)とみられる中で、このところトランプ批判が顕在化してきた。日本経済新聞もその例外ではない。例えば、4月20日付藤井彰夫論説主幹の「(拝啓)続・トランプ大統領への手紙」もその説くところは決して感情的イデオロギー的なものではなく、日米関係の重要性を前提に冷静に説き戒めてもいる。

 だが、そこで特徴的なのは、トランプ大統領の言動そのものを俎上(そじょう)に上げていることだ。その言動の対象となる事象についての背景や考察が全く欠けている。一連の強硬な関税政策、電撃的な大統領確保となったベネズエラ急襲作戦、グリーンランド領有発言、さらには対NATO(北大西洋条約機構)姿勢、そしてイラン攻撃――。そこに至った背景とその必要性についても論じてこそトータルな評価が下せるのではないか。

 ベネズエラ作戦にしてもその深刻な社会問題になっている麻薬に対する対処、さらには「裏庭」中南米における中国の覇権拡大、イランにしてもその「核保有」の悪夢は石油資源という世界経済の中枢を握るだけに、その影響は想像を絶する。米国内向けでもハーバード大学への予算などの締め付けがアカデミズムへの強権ぶりとして強調されるが、同大が全米大学界における反米・親中勢力拡大の思想的温床と化している実態には触れようともしない。

 確かに、トランプ氏の型破りというか時に品位に欠けると思われる言辞、くるくると変わる政策方針、脅しと強権ともとれる主張―これらが相まってさらに「力」の行使が半端ない。とはいえ、テレビ朝日「報道ステーション」のキャスターである大越健介氏が「トランプ氏の発言のたびに目まいがする」などと嘆いてみせるなど、何をナイーブなことを言っているのかといいたくなる。

 要するに、手順を踏んだ民主的手法や同盟国を含む各国との対話、コミュニケーションを図りながら事を進める従来の「秩序」からの完全な逸脱に見えることが、懸念と嫌悪感を引き出すのだろう。メディアは良きにつけ悪しきにつけ、当事者とは距離を置き、一段高みに立った視点で論評する。その本質を見ずに言動そのものに批判を集中させるやり方が、そんな論評に値するのか大いに疑問だ。

 この背景には「高市一強」といわれる永田町力学がある。世論調査の高市支持率の高さで真正面から批判できない分、盟友たるトランプ米大統領の言動や、政策そのものというより周辺の政治手法への批判を通じた政権批判が強まるのだろう。是々非々を明確にした政権批評が求められる。

(黒木正博)

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