万里の長城と言えば中国が世界に誇る観光名所だ。かつて気流子も訪れたことがある。ガイドによれば1日4万人もの観光客が訪れるという。確かに、大都市の繁華街並みで大変な混雑だった。
現存するこの人工壁の長さは6000㌔以上に達するという。北方異民族の侵入に備えて古代から造られ、さすがに拠点防衛の日本の城とは違い、広大な中国大陸ならではのため息が出そうな長さである。
王朝が代わるたびに修復、増築される一方、放置されたりもしたが、その大がかりな防衛政策は今の共産党政権にも継承されているのだろう。海洋でもそうした〝長城〟建設に余念がない。
中国に関する安全保障論議で必ず出てくるのは、いわゆる第1列島線と第2列島線という概念だ。前者は日本の九州・沖縄からフィリピンを結ぶラインであり、後者は日本の小笠原諸島から米領グアムを結ぶものだ。広大な海の二重にわたる長城壁と言えよう。
米軍に対し、中国はその軍事的影響力を阻止するため「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略を取っている。南シナ海の南沙諸島での人工島建設は「砂の長城」と呼ばれてもいる。日本近海での空母機動部隊による訓練も頻繁だ。
こうした海域を内海化して、いざとなれば米国への戦略弾道ミサイルの発射基地として温存を図る狙いもある。古代の北方に向けた「長城」と比べ、現代のそれは防衛(盾)を超えた外界への進出・攻撃(矛)を意図しているという違いがある。





