
米国では大学設立の条件として、地域の産業に役立つ研究を行い、技術革新を進めていくケースが少なくない。だが、わが国では従来、職業的、実践的な研究より学問の府としての大学がほとんどだった。その方向性が変わりつつある。
今、日本は建造量日本一の今治造船(愛媛県今治市)を中心に造船業の勢力回復を目指している。その一環として、地元の愛媛大学大学院船舶工学特別コースでは造船技術に関する研究・開発に力を注ぐ。
さらに地元関連企業の技術向上に貢献するため、船舶工学講座(今治造船寄附講座)の教員を中心に、今治造船や地元企業と連携し、優秀な造船技術者の養成を行っている。企業との人材交流が進みそうだ。
一方、東日本大震災の後、東北一帯を含む形で「東北半導体・エレクトロニクスデザインコンソーシアム」などの枠組みが生まれた。それを受ける形で、福島大学ではエネルギー・環境、データ・工学系の分野を強化しつつある。
産業とは離れた位置に置かれていた大学が、国や地方社会の要請に応え、産学共同による技術革新の環境を積極的に整えようとしているのは大いに注目すべきだ。大学が特許申請などにも力を入れ、ひいては地方活性化の起点となれば願ったり叶(かな)ったりだ。
高市早苗首相は昨年10月の所信表明演説で「新技術立国」を目指すことを宣言した。その内容の一つが人材育成であり、大学の取り組みとも符合する。政府のてこ入れを望む。





