
「努力を怠ればわれわれは置き去りになる。そして『赤い月』が出現する」――。ケネディ第35代米大統領は1961年5月、人類を月面に着陸させると宣言し、アポロ計画を発表した。
それから65年。人類の月面再訪を目指す国際月探査「アルテミス計画」の宇宙船「オリオン」が4人の宇宙飛行士を乗せて月周回に挑んだ。
「赤い月」とは旧ソ連の宇宙支配を意味する。計画発表の1カ月前、米国は「ガガーリン・ショック」に見舞われた。ボストーク1号が世界初の有人宇宙飛行を成功させ、ガガーリン少佐が「地球は青かった」とのメッセージを世界に発したからだ。
アポロ計画は困難を極めた。アポロ1号は宇宙でなく実験中の地上で火災を起こし3人の飛行士が焼死した。それで計画は「宇宙企業の予算獲得の陰謀だ」といった反対論が渦巻いた。
危機を救ったのは亡くなった飛行士の遺言だ。「われわれは神から与えられた好奇心を満たすために月に行きたいのです。だから生命を懸けるのです」。計画はジョンソン、ニクソン両大統領へと受け継がれ68年12月、アポロ8号が初の有人月周回を成功させた。ボーマン船長は地球へのメッセージとして聖書の「創世記」を朗読した。
中国は今、「嫦娥計画」で月を目指している。嫦娥もアルテミスも月の女神を指す。先を越されれば「赤い月」が出現する。真実の神を懸けた宇宙競争である。アルテミス計画に加わる日本も努力を怠るわけにはいかない。






