風情豊かな市街地を往く
兵庫県の南東部に位置する伊丹(いたみ)市は、大阪国際空港(伊丹空港)の所在地であり、大阪のベッドタウンとして知られるが、江戸時代から「白雪(しらゆき)」で有名な日本酒の産地で、酒蔵の街でもある。織田信長配下の武将、荒木村重の居城である有岡城の跡がJR伊丹駅近くに残る。(文と写真・辻川吉夫)

旧摂津国(せっつのくに)のへそ(地理的中心地)に当たる伊丹は交通の要衝だった。織田信長配下の武将、荒木村重は、この地を約300年間治めていた伊丹氏を攻め、その拠点・伊丹城を落として有岡城と改名、摂津守(せっつのかみ)に就任したのである。
JR福知山線の整備に伴い、有岡城跡は限られた範囲に縮小されたが、伊丹駅東側に石垣の一部と、建物跡や井戸跡が残されている(国指定史跡)。有岡城は町ごと要塞(ようさい)化した難攻不落の城だったようで、イエズス会宣教師ルイス・フロイスは「はなはだ壮大にして見事なる城」と記しているほど。

具体的な資料がないので城をイメージしにくいが、東側に猪名(いな)川と駄六(だろく)川が流れているから、敵は確かに攻めあぐんだに違いない。
天正7(1579)年、城は村重が信長に背いたことで攻め落とされ、廃虚となったが、その城下町・伊丹郷町(ごうちょう)は江戸積み酒造業の一大拠点として復活する。清酒発祥の地であり、文人墨客が集うようになり、俳人の松尾芭蕉や上島鬼貫(うえしまおにつら)も訪れたという。伊丹酒蔵通りには、郷町として栄えたことを示す大溝跡が復元されている。

「長寿蔵」は小西酒造の酒蔵を活用した地ビールレストラン。築240年以上の酒蔵を改装し醸造施設もある。2階に上がると、かつて使われていた酒造りの道具を見ることができる。

旧岡田家住宅・酒蔵は江戸時代の延宝(えんぽう)2(1674)年の建築で、住宅は国の重要文化財。現存する物の中では町家が県内最古、酒蔵は国内最古となっている(見学可能)。その隣が旧石橋家住宅(県指定文化財)で、幕末に建てられた商家。1階にクラフトショップがあるので、立ち寄ってみてはどうだろうか。
宮ノ前通りを北に進むと猪名野(いなの)神社がある。ここは戦国時代には有岡城の総構えの北端に位置し、「岸の砦(とりで)」が置かれていたという。大相撲大阪場所の期間は宿舎と稽古場になっていて、訪れた日は相撲部屋ののぼり(旗)が立っていた。

神社から阪急伊丹駅までは徒歩圏内。歴史と文化の薫る街、伊丹市の中心市街地の旅を楽しむことができた。






