トップコラム桜の国に生まれた幸せ【上昇気流】

桜の国に生まれた幸せ【上昇気流】

 「世の中は三日見ぬ間に桜かな」――。江戸中期の俳人、大島蓼太(りょうた)のよく知られた句である。3日ほど忙しくしているうちに桜が咲いていたというものだ。そんな経験をした人は少なくないだろう。

 「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」と三十六歌仙の紀友則は詠(うた)った。日本人は桜が満開になってすぐに散ってしまうことを惜しんできた。そのためか、蓼太の句も「三日見ぬ間の」と誤伝され、「三日見ぬ間の桜」という言葉が定着してしまった。

 日本人にとって桜は特別な花だ。桜の歌を230首近く詠んだ西行法師に至っては、「願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」と詠んで、そのごとく亡くなった。

 年を重ねると桜にまつわるさまざまな記憶が積み重なるように思われる。桜を見ながら、人生の光景、楽しい思い出、悲しい思い出が、こもごもに蘇(よみがえ)ってくる人もいるだろう。

 米国とイスラエルによるイラン攻撃でホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油価格が高騰。トランプ米大統領が次にどう動くのかなど、世界は戦々恐々で、油断のできない状況が続いている。「三日見ぬ間に桜かな」を今、経験している人もいるのではないか。

 最近は気候変動のせいか、見頃を迎えても好天に恵まれないケースが増えている。予報では、きょうは一部を除き全国的に穏やかに晴れる所が多いという。世間は多事だが、何はともあれ花の下で桜の国に生まれた幸せを味わいたい。

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