
韓国に初めて来た頃の話だが、日本からのお客さんに車の運転を頼まれ、地方に行った時、旅館の女将(おかみ)から「ウリ(私たちの)運転手さん」と声を掛けられたことがあった。初対面で名前も知らないから、そう呼ぶしかなかったのだろうが、印象的だったのは単に「運転手さん」とは言わず、頭に「ウリ」と付けたことだった。不思議な温かさが伝わってきたのを覚えている。この「ウリ」という言葉は、見ず知らずの相手に仲間意識を抱かせる力があるものだと感心した。
ただ、近年の韓国は人々の間で仲間意識が薄れつつある。先日、ソウル市から特派員たちにメールで送られてきた報道資料を見て、少し驚かされた。そこには「心のコンビニの利用者、孤独感が減る」と記されてあった。「心のコンビニ」とは、独り暮らしで孤独感にさいなまれている高齢者や学校を卒業しても就職できず、家に引きこもる若者などのために、行政が公共施設を利用して、コンビニのように誰でもいつでも出入りして交流できるようにしたスペースのことだ。
事あるごとに人と人との距離の近さを感じさせる韓国でも、ついにこの種の施設が必要になったということか。急速な都市化や核家族化、経済至上主義の広がりなどで、昔のように人情を感じづらくなった裏返しなのかもしれない。
「心のコンビニ」では、利用者が木工や園芸、料理などに取り組むプログラムが用意されているほか、音楽鑑賞をしたり、単におしゃべりしたり…。利用者は増加し、満足度も高く、「もう一人じゃない」と感じるきっかけを提供しているようだ。(U)






