トップコラム国際法の現実を直視せよ【政界一喝】

国際法の現実を直視せよ【政界一喝】

 日米首脳会談(現地時間19日)に臨んで高市早苗首相は、国会で野党から米国とイスラエルによるイラン攻撃は国際法違反かと問われ、外交の知恵から「法的評価を控える」と答えた。トランプ米大統領との実際の会談でもこの文脈を貫き、首脳間の親密な信頼関係を維持しつつ、世界中に平和と繁栄をもたらせるのは「ドナルドだけだ」と、中東情勢の早期鎮静化を訴えた。

 高市首相は、国連憲章第2条4項(武力行使の禁止)と第51条(自衛権の行使)の解釈の狭間(はざま)に立ち、法的評価を確定させない立場を取っている。国際法は安全保障の万能薬ではない。その幻想から目を覚まし、現実対処に向けた国民議論を深めることにこそ、大いに意義がある。

 国連で絶対的権威を持つ安全保障理事会の常任理事国(米中露英仏)の一角、ロシアによるウクライナ侵攻がすでに4年を経過した。国際法は近年、全体的な無効化が際立つ。一方で、米イスラエルのイラン攻撃を巡る論議のように、その一定の効力を理由に、政治的に利用される現実もある。

 マドゥロ大統領を生け捕りにしたベネズエラ作戦に続き、米国のイラン攻撃も最高指導者ハメネイ氏の斬首作戦に始まった。これらは副次的に、民主主義国家群が国際平和秩序への脅威と認識する、中国の習近平氏、ロシアのプーチン氏、北朝鮮の金正恩氏など、独裁的・権威主義的な首脳らへの圧力、また圧政下の市民解放への道筋を示唆する。核開発・ミサイル攻撃・テロ支援国家が負うべき代償を自覚させるシグナルともなっている。そうして北朝鮮の核開発、ロシアの拡張主義、中国の台湾有事を巡り、日米同盟は安全保障上の「現実の盾」を担う。

 イランの核兵器開発問題では国際原子力機関(IAEA)が、ウラン濃縮について60%高濃度ウランの継続保有(440㌔規模)を確認、兵器級(90%)への短時間移行可能を報告している。また地下施設(イスファハンなど)へのアクセス不能、在庫不明とのことだ。中東各国でのテロ支援(パレスチナのハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派など)の実績を踏まえ、そこに核兵器支援が伴う場合への 「潜在的脅威」は、国際法上の「差し迫った脅威」の解釈を可能にする。

 日本の国会で米国の国際法違反が問われる一方、こうした核拡散による、人類全体の安全保障脅威の議論が薄れていないか。日イラン関係は「良好」という。ならばわが国は唯一の被爆国としての矜持(きょうじ)から、対イランでは単に、核兵器開発は「決して許されない」と非難を表明するにとどまらず、その低減と不拡散への外交努力も問われてしかるべきだ。

 日米同盟を論じるに、戦前、戦中の敵対関係と、戦後の同盟構築への歴史的経緯と意義が、国内教育・教養として定着していない現状認識も必要である。広島・長崎の記憶からは、わが国の核政策議論を忌避するエネルギーを、諸外国での核拡散防止に向けた現実的な抑止努力へも振り分けてはどうか。

 中東情勢を巡り、高市首相が国際法上の評価を控えた慎重姿勢は、わが国がよって立つ全体を配慮した賢明な判断だ。日米同盟の深化から、日本独自の安全保障、また世界の安定に効果的に寄与する道も開かれよう。その上で、国際法の理想と対峙 (たいじ)する力の現実を直視する熟議の圧倒的不足を自覚し、議論を深めよ。

(駿馬)

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