
「桜の開花がトップニュースになるのは日本だけ」と気象予報士が新聞に書いていた。言われてみればその通りだ。『百人一首』にも収録されている小野小町の歌には「花のいろはうつりにけりな」とある。「せっかくの桜の花も、すっかり色あせてしまった」という意味だ。ただ「花のいろ」は、自身の容色の衰えをも含んでいるという解釈が一般のようだ。
小町は出羽(現在の秋田、山形両県)の生まれと言われることが多い。何かのつながりで都へやって来たのだろうか。平安時代前期の人物とされる。
当時の桜がどんなものかは分からないが、江戸時代末期に交配で誕生したソメイヨシノでなかったのは確かだ。ソメイヨシノの寿命が短いのは最近知られるようになった。
ソメイヨシノが人気なのは、咲いている期間が短いため、ということは理解できる。期間が短ければ誰もが注目する。3カ月も続けて咲いていれば、誰も振り向かない。気象予報士が、桜の開花は東京の場合、1960年代に比べて1週間程度早くなったと言うのも了解できる。
長らく生きてみれば、桜に関する体験はたくさんあるが、どんな実景以上に、最近夢で見た「吉野の桜」が一番美しかった。
空中を浮遊しながら行ったことのない「吉野の桜」を見下ろしていた。「これが吉野の桜なんだ」と分かっていた。夢の中の桜は満開そのものだったので「花のいろはうつりにけりな」とはだいぶ様子が違っていたことは確かだ。






