トップコラム生殖医療と生命倫理【上昇気流】

生殖医療と生命倫理【上昇気流】

 今年2026年は、世界初の哺乳類の体細胞クローンである雌羊・ドリーが誕生して30年になる。この間、DNA合成やその組み換え技術が格段に進歩し、生殖医療の発展は目覚ましい。ただし、科学者は生命を育むことはできても生命自体を創ることはできない。

 大阪大学などの研究グループは、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)から精巣のオルガノイド(ミニ臓器)を作ることに成功し、その研究成果が米科学誌サイエンスなどに掲載された。

 それによると、作製された精巣オルガノイドから精子を作る細胞が生み出され、それを雄の不妊マウスに移植すると精子を得ることができた。さらに、受精によって子が生まれたという。

 不妊というと、以前はその原因を女性に求めるのが専らだったが、男性の方に原因がある場合も分かってきた。今回の成果を基にさらに研究が進めば、男性の不妊治療に貢献できよう。

 ノーベル賞候補とも言われた免疫学者・故多田富雄氏は著書『生命をめぐる対話』の中で、ゲノム(全遺伝情報)について「ゲノムの始まりまで戻って考えると(略)大元祖遺伝子などという最初の発明があった」との考えを記した。

 ゲノムなり細胞なりを最初に創出した「超システム」(多田氏)やその主体の存在を考えざるを得ず、宗教や哲学によるその追究が欠かせなくなっている。科学が発達すればするほど、人間の生命を扱うことへの倫理的。な問い掛けがなされなければならない。

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