気象庁の長期予報によると、今後5月にかけて全国的に気温が高く、降水量も平年より少ない。関東でも東京の水がめである利根川水系の矢木沢ダムの貯水率が3割を切っている状態で、水不足が深刻化する懸念がある。
豊富な水源に恵まれたわが国だが、これを支えるのがダムだ。ダムの歴史をひもとくと、戦後復興の大きな担い手として、1955年に九州宮崎県の耳川上流の上椎葉ダムが建設された。高さ100メートルを超える大規模なアーチ式ダムとしてはわが国最初である。
9万キロワットの発電量を誇り、戦後九州の電力需要を支えた。戦後間もないだけにGHQ(連合国軍総司令部)の承認の下、米国の技術者集団が顧問となって主導したが、その後は黒部ダムなど日本人自身の手によって造られた。
椎葉村は九州山地の奥深い秘境の地。資材を運ぶための道路建設から始まり、度重なる台風による土砂崩れ等との闘い。さらに、V字渓谷の両サイドが強固な岩盤という要素によって工事は困難を極めた(『椎葉村史』など)。
約3年の工期に延べ500万人の人員が投入された。今もダムを見下ろす公園には工事の犠牲者105人を慰霊した碑が建てられている。
日本最大のアーチ式である黒部ダムの建設を描いた映画「黒部の太陽」(熊井啓監督)を見ても、その苦闘と困難がうかがい知れる。そうした犠牲があったことを思えば「水と安全」がタダではないことを改めて痛感する。






