トップコラム廃虚から立ち上がった世界遺産【上昇気流】

廃虚から立ち上がった世界遺産【上昇気流】

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産の保存などに携わる人々にスポットを当てたNHKBSの「世界遺産(レガシー)ワーカー」で、ポーランドの「ワルシャワ歴史地区」が取り上げられた。復元された市街地が登録された唯一無二の文化遺産という。

 第2次大戦末期の1944年8月1日、ナチス・ドイツ軍に占領されていたワルシャワで市民が一斉蜂起する。しかし2カ月ほどで鎮圧され、ヒトラーは見せしめとして、市街を空爆などで徹底的に破壊、8割以上が廃虚と化した。

 だが、その不屈の精神は後の「連帯」の運動などに継承され、共産主義体制の崩壊へと繋(つな)がった。

 蜂起から80年を記念して、2023年暮れ、広島市で「ワルシャワ。灰の中から甦る不死鳥」展が開かれた。ナチスによる殺戮(さつりく)、勇敢に戦う市民などの貴重な写真が多数展示された。

 戦後、ワルシャワ市民は街の復興に取り掛かる。中でも中世の趣を残す旧市街は広場や大聖堂、旧王宮など昔のままに再現された。ただ世界遺産の登録に際しては、レプリカであるとして歴史的価値に疑問が呈された。これに対し、再建事業の中心にあったワルシャワ工科大学のヤン・ザフファトヴィチ教授は「旧市街は復元されたからこそ、登録に値する。もし破壊と復興の歴史がなければ登録しようとも思わない」と反論した。

 世界遺産登録は1980年。破壊からの復興という人々の営みが評価された初めてのケースとなった。

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