
首都ヘルシンキの街づくりの発想が大きく変わりつつある。かつては車の流れを妨げない道路計画が中心だったが、今ヘルシンキが掲げる優先順位は明確に「人」に移った。
歩行者や自転車、公共交通を主役に据え、街を移動する体験そのものを心地よいものに変えようとしている。特に、ヘルシンキ中心部の歩行者空間が大幅に拡張される予定だ。
例えば、観光客もよく訪れる中心部にある並木通りのエスプラナーデ通りでは、車線を減らし植栽やベンチをさらに増やして、人が立ち止まってひとときを過ごせる空間が増やされる予定だ。また、ヘルシンキ中央駅の前の通りは、私有車の通り抜けを禁止し、公共交通機関、歩行者、レクリエーションに限定する計画だ。さらに、車道の縮小によってできるスペースを自転車レーンとして活用する。
この都市設計の背景には、「誰もが自分らしく過ごせる街」を目指す理念がある。人がゆっくり歩き、立ち止まり、交流できる場所を増やすことで、都市の幸福度を高めるという考え方だ。
街を、通り抜ける場所ではなく、人が足を止めて長く過ごしたくなる場所にするという価値観だ。歩行者空間の拡大、緑の増加、広場やベンチの整備はそのための手段であり、人が集まり、偶然の出会いがあり、会話が生まれる。そうして居心地を良くすることで、中心街の活力が育つとヘルシンキ市は考えている。
車の利便性を最優先してきた20世紀型の都市から、歩くことが心地よい21世紀型の都市へというヘルシンキの試みは、都市が抱える課題に対する一つの答えかもしれない。(Y)





