
先日、妻と近所のパン店を訪れた時のこと。自分たちでトレーに乗せた商品をレジに持っていくと、店員はそれをバーコードで読み取り、袋に入れた。時間にしてわずか30秒、特段のサービスを受けたわけでもない。
しかし、支払いのためにタブレット型のレジ端末にカードを差し込んだ瞬間、衝撃の画面が表示された。「チップを選択してください。5%、10%、15%」
店員は気まずそうにこちらを見詰めてくるし、後ろには次のお客さんが控えている。画面に小さく表示された「ノーチップ」のボタンを押す勇気が持てず、反射的に一番低い「5%」をタップしてしまった。
今、米国で問題視されているのが、こうした心理的圧迫によって払わされる「ギルト・ティッピング(罪悪感チップ)」だ。
調査機関トーカー・リサーチが2025年に実施した調査によると、米国人は月に約24㌦(約3700円)もの「罪悪感チップ」を支払っているという。
かつてチップは、レストランや理髪店といった対面サービスの質に対する「感謝の気持ち」として支払われるのが基本だったが、今では持ち帰りのコーヒーショップや、セルフレジでさえチップを求められることもある。
これらの背景には、従業員の賃金を、事実上顧客に肩代わりさせる企業や経営者の存在があると指摘されている。
店員への「感謝の印」が義務感に塗りつぶされている現状は、肥大化した米国のチップ文化のひずみを映し出しているようだ。
(K)






